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前回の「建築豆知識:杭工事とは?」では、杭工事についてお話ししました。今回は、杭工事が必要になる地盤と、その調査方法についてお伝えします。

「悪い地盤」と「良い地盤」

「地盤が悪い」とはよく聞く表現ですが、「悪い」とは一体どのくらい悪いのか?という認識は、設計士および工事関係者と、それ以外の方では大きな差があると感じています。

今回の8階建てマンションの現場(横浜市)は、「かなり悪い」と表現すべき場所です。
一言で言うならば、見た目は土ですが踏ん張る力のない土。
例えて言うならばゼリー状態の土の上にマンションを建てる設計です。
そのため、杭工事には、建物の重さを安定した地層(地下30メートル)まで伝える役割が求められます。

杭工事の様子

この現場のすぐ近くに、横浜スタジアムがあります。野球の試合に3万人、コンサートには3万2千人を収容する巨大建造物です。
おそらく地盤は同じような環境だと考えられますが、1978年の開業から50年近く安全に運営されています。
それは、地盤の悪い場所でも頑丈で安全な建物をつくりたいという設計士や工事関係者の努力が積み重ねられた成果なのです。

では反対に、地盤が最高に良い状況とはどういったものでしょうか?
ニューヨークのマンハッタンのように、岩盤でできている土地は地盤が良いと言われています。

地盤の良し悪しを判断する調査方法

調査方法は、「スウェーデン式サウンディング試験」という方法が住宅では一般的です。
「スウェーデン式」あるいは「SS試験」と呼ばれています。

スウェーデン式サウンディング試験は、簡易ボーリング調査と言う位置付けです。
簡単に説明しますと、地面に鉄の棒を刺して、回転と重さをかけて棒の沈んでいくスピード、様子から地盤の良し悪しを判断します。
沈んでいくスピードが速ければ地盤が悪く、遅ければ地盤が良いということになります。
検査員が行うこともありますが、最近では機械で自動測定し、地盤の状況を数値化することが多いです。

この方法は調査時間が短く、ボーリング調査に比べて費用が安く済むというメリットがあります。
ただし地下10mまでの限定調査です。また、本来のボーリング調査のように、直接土の質を見ながら掘っていく方法とは異なります。
スウェーデン式の場合、鉄棒の先が岩などに当たったら進むスピードが落ちるので、その結果を「良好な地盤」と検査員や機械が判断してしまうリスクがあります。
正確な判断と言うより、イメージした地下の情報の確認手段と考えるべきでしょう。

気を付けたいのが、調査会社が杭工事会社でもあるパターンが多いことです。
調査報告書に「杭工事を推奨します」と表記されてしまうと、通常は杭工事をする流れができてしまうのです。。。

家づくりに関して疑問に思うことがあれば、こちらもご覧ください。
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湘南を拠点にする一級建築士事務所 米村和夫建築アトリエ/風のアトリエ
建築家 米村和夫

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