建築豆知識:木の外壁やウッドデッキを作るなら、どんな種類の木が適している?
木材を生かした独創性のある建築
突然ですが、クイズです。
「吉祥寺の家」の外壁やバルコニーに貼ってある木材は、何という木でしょうか。
この木はセランカンバツといい、主に東南アジアで生産されています。
硬くて、耐久性が高い木材であるため、吉祥寺の家の外壁は塗装をしていません。むしろ、塗装を弾いてしまうので塗装しないことが多い樹種なのです。
最初の写真は2009年に竣工してすぐに撮影したものです。では、それから15年近くノーメンテナンスで、2024年にはどのような姿になったでしょうか。
バルコニー部分は、日光や雨に当たったことで色が黒っぽく変化しましたが、曲がったり割れたりすることはありませんでした。2階部分の外壁は、広く設けた軒先によって日光や雨の影響を受けにくいため、色があまり変化していません。
このように、同じ木材を使っていても、時間が経つと部分ごとに色が変わっていきます。無塗装だからこそ、色の変化を味わいの一つとして楽しめるのではないでしょうか。
もう1軒、外観に木材を生かした住宅をご紹介します。
箱根仙石原の「自然と一体となったテラスがあるゲストハウス」です。こちらの住宅では、軒先に屋久島産の杉材を使っています。
「屋久島の杉」というと、「天然記念物だから伐採禁止なのでは?」と思われるかもしれません。
実は、屋久島の杉にもいろいろな種類があります。伐採が禁止されているのは樹齢1000年以上の「屋久杉」です。
一方で、屋久杉の種などから計画的に育てられて、木材として利用できる杉材もあります。こういった杉材は「屋久島地杉」とも呼ばれます。
屋久島の杉は脂分が多く撥水性があるため、塗装しなくても外壁に使うことができます。仙石原の住宅でも塗装せずに軒先に使い、木目がきれいに映える空間を実現しました。
今後の経年変化によって、どのように味が出てくるのか楽しみです。
屋外で使う木材を選ぶときのポイント
先ほどご紹介したセランカンバツは、ウッドデッキの素材としてもよく使われています。
ウッドデッキは、家の完成後に建築主がDIYをして作るパターンも多いのですが、思うようにいかないこともあります。なぜだと思いますか?
ホームセンターなどでDIY用に売られている木材の多くは、SPF材です。SPFとは、スプルース(トウヒ)、パイン(松)、ファー(モミ)の頭文字をとったものです。
SPF材は柔らかくて加工しやすいため、初心者でも簡単にウッドデッキを作ることができます。
しかし裏を返せば、柔らかいということは耐久性が低く、傷がつきやすいということです。SPF材は曲がり、ねじれ、割れ、反りなどが起きやすいと言われています。水にも弱いため、屋外で使う場合は防腐加工が必須です。
SPF材でウッドデッキを作る場合、耐久年数は2〜3年といったところではないでしょうか。あらかじめ覚悟をしておけばいいのですが、そうでないと「せっかく作ったのに、あっという間にダメになってしまった」とガッカリすることになりかねません。
長い目で見れば、屋外で使うにはセランカンバツのような木材が適しています。他にも、ウリン(別名アイアンウッド)、ジャラ、イペなどは耐久性が比較的高い木材として有名です。しかし、硬い木材は電動丸ノコやインパクトドライバーなどの機械と熟練の技術がなければ加工できないため、DIYで取り扱うのは難しいでしょう。頑丈で長持ちするウッドデッキを作りたいのであれば、プロに依頼することをおすすめします。
そうは言ってもご予算の都合もあるでしょうし、家が建っている環境(日当たりや湿度など)もそれぞれ違います。状況に合わせて最適な木材を選んでいくことが大切です。
まずは、木材の特徴をよく知っている設計士に相談してみてはいかがでしょうか。
当事務所では、セランカンバツや屋久島の杉をはじめ、「焼杉」などのさまざまな木材を使って、木の温かみや木目の美しさを生かした家を設計してきた実績があります。ぜひ、ご相談ください。
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湘南を拠点にする一級建築士事務所 米村和夫建築アトリエ/風のアトリエ
建築家 米村和夫