“室内と室外の中間的な空間”の魅力〜バワの建築に触れる・その1〜
縁側のような場所を作りたい。
縁側とは室内のような、室外のような中間的な空間です。
私たち設計者にとって、この中間的空間は、新しい空間提案、生活提案ができる重要な場所なのです。
縁側は侘び寂びを演出することができるだけでなく、日本ならではの、情緒ある四季の自然を楽しむ建築空間となります。
例えば当事務所では、田園風景に溶け込む大きな縁側のある家を設計した実績があります。
田園風景まっただ中の家(千葉県四街道市の家)
では、日差しの強い熱帯地方の建築はどうでしょうか。
こうした地方では直射日光から生活を守る必要があります。そのため、室内と室外の中間的空間を生かした独創的な建築をよく目にすることができます。
そうした建築を多く手がけたのが、スリランカ人の建築家ジェフリー・バワ(1919〜2003)です。リゾートホテル建築の巨匠と呼ばれているバワは、世界のリゾートホテル界や別荘建築に大きな影響を与えました。
その建築の特徴は、一言で言えば「環境や自然との融合」ではないかと思います。
これから数回にわたって、バワの作品の魅力をご紹介します。
ヘリタンス・アーユルベーダ・ホテル
上の写真は、私(米村)が撮影したスリランカのヘリタンス・アーユルベーダ・ホテルです。
屋根(天井)が一部にあるだけですが、ここは立派なホテルの食事スペースです。ビュッフェスタイルで、屋内側のゾーンに料理が並びます。
すぐ横のプールサイドには、食事をするためのテーブルが並びます。一部はパーゴラ(屋根なし)の仕様になっています。
熱帯地方のスリランカでは、雨季には日常的に雨が降ります。そのため、ビニールカーテンにて、簡易的ではありますが雨風をしのげるように工夫されています。
ヘリタンス・カンダラマ・ホテル
上の写真は、バワの代表的なホテルとして有名なヘリタンス・カンダラマ・ホテルです(米村撮影)。
このホテルはエントランスのフロントが半外部空間に作られています。
地形地盤を表現する岩がむき出しで、壁になると同時に建築のインテリア空間として存在します。
他の特徴としては、樹木を外壁に絡ませています。最近では、自然環境が豊かな場所に建築物を作るときによく使われる手法ですが、その先駆けと言えるでしょう。
建てられてから約50年!このホテルは、見事に自然と一体となって共存しています。
ジェフリー・バワの魅力的な建築について、これからもご紹介していきますので、お楽しみに。
アジア・ヨーロッパなど100都市以上を旅した米村和夫のプロフィール
湘南を拠点にする一級建築士事務所 米村和夫建築アトリエ/風のアトリエ
建築家 米村和夫